やらなければならないことより
 やりたいことをやればいいよ

 固いこと言わないで
 気楽にいこう

 誰からも束縛されない
 気ままな道を歩いていこう

 両手を真っ青な空に伸ばして
 確かな未来を掴むんだ



  ダイナマイト☆ハニィ



古都莉               .



 冷房の効いた心地好い保健室で、はやては頬杖をつき窓の外を眺めていた。
 絵の具を垂らしたような青い空に、綿菓子のような白い雲が浮かんでいる。
 何とも穏やかな時間だった。
 ふと、グラウンドの一点に目が止まる。

 たまじがいた。

 体育の授業なのだろう、体操服でボールを追い駆け回っている。
 小さな体で目まぐるしく動き回る様はまるで駒のようだった。

(やっぱ細いよなぁ……)

 友人たちと楽しげに笑うたまじを見ながら、何気なくそう考えた。
 未発達なその体は、どこもかしこも細すぎて、強く抱けば折れてしまいそうだ。
 それでも、子供独特の柔らかさは至極抱き心地が好い。ふにふにのほっぺたや滑らかな肌の感触も好きだった。
 大きくなってほしいと思う反面、このままでいてくれたらと思う時もあるのだ。

(ま、大きくなっても触り心地の良さは変わんねぇんだろうなぁ……) 

 すると、ぼんやりと眺めていたはやてに気付いたたまじがにっこり微笑みながら手を振ってきた。
 なんとも嬉しそうな笑顔がまた可愛い。手を降り返してやった後、集合がかかったのだろう。
 玉次はもう一度大きく手を振ってから駆け出していく。
 たまじが校庭を後にするのを見届けてから、はやては大きく伸びをした。背もたれが反り返りキィ、と音を立てて鳴る。
 もうじき昼休みになる。
 そうすれば、たまじはこの保健室へ来るだろう。
 その前に仕事を終わらせようと机に向かおうとして、はやてはもう一度窓の外を仰ぎ見る。空はどこまでも青く澄み、雲はとても―――白かった。



 やらなければならないことより
 やりたいことをやればいい

 固いこと言わないで
 気楽にいこう

 曲がりくねった道の先に
 どんな不安があろうとも

 この青い空の下
 輝く未来を掴み取ろう





    【終】